ボート選手として書いた最後のブログ記事から約3年。
世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」に向けて海外(バミューダ)で生活したり、アスリートのセカンドキャリアという自分には無縁と思っていた課題に直面したり、新たにワクワクするイベントへの参加が決まったりと、まるでジェットコースターのような3年間でした(心の浮き沈み的な意味も含めて)。
今年から「SailGP」という新しいセーリングイベントで日本チームの選手として活動します。
前回のアメリカズカップ艇「AC50」を改良した「F50」を使う新リーグで、2019年は「シドニー、サンフランシスコ、ニューヨーク、カウズ、マルセイユ」の世界5ヶ所でレースをします。
世界屈指のセーラーで、ロンドン五輪金メダル・リオ五輪銀メダルと2大会連続でメダルを取り、世界選手権でも8回くらい優勝している「Nathan Outteridge」がチームのキャプテン兼CEOを務めます。キラキラのキャリアです。
最初は日本チームにNathanのような外国人選手も加わっていますが、一年ごと日本人を増やしていかないといけないので、数年後には全員が日本人のチームとなります。日本の若いセーラーにとっても、大きなチャンスでしょう。
来月、大会として初のレースがシドニーで開催されます。新しいチームやイベントの立ち上げに初期メンバーとして加われることが光栄であり、楽しみです。
さて、この3年間を通じて、自分にとってボートは主戦場ではなくなりました。
息抜きで漕いだり、外から情報を得たり、観戦したりすることはあっても、熱くなって誰かと張り合う対象ではもうありません。
今の日本代表のエルゴのスコアを見たりしても、「おー、なかなか凄い」と思うことはあっても、昔みたいに自分との優劣を気にすることもほとんどありません。
大学卒業後、実業団ではない普通の会社に入ったにもかかわらず何年もボートを漕いでいた時、「これはある種の呪いだな」と思っていましたが、そんな呪いは気がついたらすっかり解けていました。
ボートを続けていたら、それなりに喜怒哀楽を感じながら打ち込んでいたと思います。でも、自分の当時の実力とそこからの延長線上には、今ほどのチャンスはなかったのではないかと思います。
そう考えると、「ボート」というフィールドに固執せず、別のフィールドに辿り着いたことは、少なくともスポーツ選手としてのキャリアの観点では良かったです。
(あえて「辿り着く」と書いたのは、セーリングを始めるきっかけになったSoftBank Team Japanの選考会の前にも、他競技のトライアルみたいなイベントに少しだけ参加したことがあったからです)
もちろん、雇用の安定性に欠けるなど、プロスポーツなりの厳しさもあるので、自分が良いと思うことが他の人にとっても良いというわけではありません。何が良いかどうかはそれぞれの環境や価値観、目的などによって異なり、また、その時点では良いと思っても予想外のことが起こるのが世の常です。
なので、後から振り返った時に今回の選択が良かったと思えるように、チームの活動に励んでいこうと思います。
さて、ボートは今でも関心はありますし、そこで頑張っている仲間のこれからの活躍はとても楽しみです。特に最近は一橋の先輩と後輩が活躍しているようで、東京五輪の日本代表選考は選考過程から楽しませてもらえそうです。
一方、「Rowingの志」というブログで書かれている通り、日本ボート界に関しては、いろいろ問題意識を持っている方もいらっしゃいます。
もはやボート競技の当事者ではないので、現場の選手やその他関係者の方々の苦労やもどかしさなどは正直わからないです。
自分みたいに「いろいろあって、ボート辞めて他のことする」のも良いと思います。
しかし、「いろいろあるけど、やはりボートを続ける」のであれば、変えるべきところは変えられるように仲間や資金を集めて変えていく必要があるでしょう。
これからどんな風にボート界が変わっていくのか、もしくは変わっていかないのか。
何はともあれ、自国開催の五輪で活躍する選手が誰になるのか。楽しみです。