CRIMSON/GANG's blog @SailGP

「既存の選択肢にとらわれない方法を示す」を理念に活動するRowing Teamです。CEO:Yuki Kasatani

セーリングを全く知らなかった昔の自分に教えてあげたいアメリカズカップのレースの流れ

当初はRowingのブログとして始まったということが嘘であるかのように最近はめっきりRowingから離れた本ブログ。そうこうしているうちに、いよいよアメリカズカップの挑戦者決定シリーズが開催される。

さて、アメリカズカップに興味を持たれた方の中には、ヨットレースに馴染みがない方もいると思うため、原則とレースの流れを簡単に説明したい。

 

原則

スターボードサイド(進行方向を向いて右側)から風を受けて進んでいる艇(スターボードタック)は、ポートサイド(進行方向を向いて左側)から風を受けて進んでいる艇(ポートタック)に対して優先。

・両艇が共にスターボードタックもしくはポートタックの場合、かつ、艇がオーバーラップしている(自艇の2つのハルの後部を通るように引いた線に対し、双方にとって相手の艇の一部または全部が前方にある。要は自分から見て相手の艇が自分と重なる形で横にいたり、前から向かってきている)時、風下側の艇が優先

・両艇が共にスターボードタックもしくはポートタックの場合、かつ、艇がオーバーラップしていない時、前方の艇が優先

・上記のルールを破れば、相手に対して2艇身の距離を空けなければいけないペナルティーが課される。

・ヨットは風向きに対して真っ直ぐ進めないため、風向きに対して角度をつけて進んでいく。そのため、何度も方向転換しながら進むことになる。

・レース海面は境界(バウンダリー)で囲まれており、その範囲内でレースを行う。バウンダリーを超えたらペナルティー。

 

レースの流れ

前回のアメリカズカップのレースを例に説明していく。最初から観ると、なんとなくアメリカズカップの雰囲気が伝わるため、ぜひ一度通しでご覧いただきたい。 

1.スタート前

レース開始まで2分10秒を過ぎるとポートタックの艇、2分を過ぎるとスターボードタックの艇がスタートエリアに入ることができる。

スタートエリアでは原則で述べたルール等を駆使し、相手に対して有利な条件でスタートできるように位置の取り合いが始まる。

スタート時間を過ぎた後にスタートラインからスタート。

 

2.スタート直後からマーク1、マーク1から風下のボトムマークまで

マーク1までは風向きに対して約90度の角度で進むリーチングという状態。スピードが出やすい。マーク1を回った後、ジャイブ(風下に走りながら、スターボードタック⇔ポートタックを切り替える)しながら、風下のボトムマークを目指す。

ジャイブの際はボートスピードが落ちるため、艇をフォイリング(水面から浮き上がった状態)させ続け、なるべく減速させないことが大事。

ボトムマークはどちらを回航してもよい。

 

3.ボトムゲートからトップマークまで

 タック(風上に走りながら、スターボードタック⇔ポートタックを切り替える)しながら、風上のトップマークを目指す。ジャイブと同様、艇を減速させないことが大事。

動画の途中で艇がバウンダリーの両側に離れた状態から中央に向けて近づく瞬間があるが、原則にある通り、スターボードタックの艇に優先権があり、ポートタックの艇は避けなければいけない。

ボトムマークと同様、トップマークはどちらを回航してもよい。

 

4.トップマーク以降

コンディションによって回数は異なるものの、トップマークとボトムマークを行き来し、最後にどちらかのマークを回った後でフィニッシュラインに向かう。

 

5.最後のマークからフィニッシュラインまで

フィニシュライン側のマークを回り、フィニッシュラインまでリーチング。

 

その他

  • ヨットは風の強さや風向きの変化によって、艇の速度や風向きに対して走れる角度が影響を受ける。そのため、ボトムマークやトップマークで相手と違う方向に進むことで、優位に立とうとすることがある。

 

残念ながら地上波ではレースが放送されないようではあるが、アメリカズカップの公式アプリでレースの動画が配信されるようである。

とはいえ、やはり報道の形で広く日本の皆さんに成果をお伝えできるよう、一つ一つのレースで結果が出せるように励んでいくつもりだ。